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歯医者のワン先生

私の歯医者は香港出身のワン先生だ。1年以上前に初めて診てもらったときは、口を開けた途端先生が「いい歯だなあ」と声を上げるくらい虫歯の一つもなかった。だから治療の必要はなかったのだが、わざわざ足を運んだので歯の汚れを落としてもらうことにした。その間、ワン先生はせっせと手を動かしながら、一番好きな日本食レストランはシティーにあるDefuneだとか、イギリス育ちの娘は中華料理が嫌いだとか、食を中心とした話を続けた。アジア人同士、食べ物の話をするのはよくあることだ。それにしても、口を開けてろくに返事もできない相手に、これだけ話をする歯医者も珍しいと思ったのが、ワン先生に関する最初の印象だ。

この検診からきっかり6ヶ月後、会社にワン先生から電話がかかってきた。「半年経ったから、歯診せに来なさい。」と、歯医者なのにどうやら営業までこなすようだ。その時は会社の研修等で忙しかったので、いつ行けるか分からないと断ったが、半年後また電話が掛かってきて「歯科保険、更新されたでしょ?いらっしゃいな。」と言う。今回は先生の商売熱心さに負け、しぶしぶながらまた赴くことにした。検診費用は会社のプライベートの医療保険でカバーできるので、「まあいいか」とも思った。
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一年ぶりの先生は、相変わらず坊主頭でがっちりした体にまとった白衣がまぶしく見えた。一通り点検をしてもらったが、予想通り今回も虫歯の一本もなし。前回と同じく他にしてもらうこともないので、汚れをゴリゴリ落としてもらうことにした。その間、おしゃべりなワン先生が楽しそうに話し続ける。どうやら、先生は来月東京でホリデーを過ごすのが楽しみでわくわくしているようだ。香港にいるお母さんが、誕生日を毎年違う国で祝うため一族を招待するらしいが、「親戚・家族が多いから、なかなか大変なんだよ。」と先生は言う。太っ腹なお母さんが羨ましい。

歯の掃除は、先生のとりとめのない話を聞いているうちにあっという間に終わった気がした。帰り際、にっこり笑うワン先生は「半年後に電話するからねー。」と言って手を振った。
by ldnshigoto | 2010-07-13 05:41 | 出会い