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癒しの食べ物とは

インドネシアにしばらく住んだことのあるイギリス人女性が、食事についてこんなことを言っていた。「私、どこの食べ物でも食べられるし、インドネシア料理は最高においしかったけど、妊娠してつわりが出た時だけは、イギリス料理が食べたくて仕方なくなったの。フィッシュ・アンド・チップスを夢にまで見たわ。」

世の中、旅先で現地独特の食べ物を存分に楽しめる人と、短期間の旅行でも母国の味が恋しい人の二通りがいる。海外旅行に出かける時、緑茶、味噌汁、漬物等を、「非常食」としてスーツケースにつめる人も結構いるようだが、私はそういうタイプの人間では無い。どこの料理でも、比較的おいしく食べられる。そんな私でも、疲れたときとか身体が弱っているときに胃が欲するのは、不思議と最もシンプルで基本的な日本の味だ。

この夏の旅先のモロッコでは、タジンと呼ばれる円錐型の土鍋に、野菜や肉、スパイスを入れてごった煮にする料理が家庭の味だ。1週間の旅行中昼と晩、キャンプでも、レストランでも、ホテルでも、タジンが出された。旅も中盤に差し掛かかり参加者の多くがタジンに飽きてきた頃、暑さと疲れでお腹を壊す人が続出した。それでも、大きな問題も無く旅を終えロンドンへの帰途に着くとき、私は何気なく言った。「あーあ、家に着いたら、暖かいご飯と味噌汁を食べよう。」すると、横にいたカレシが、「ボクは、ラザニアが食べたい!お腹も壊したし、タジンにも飽きた。やっぱり、シンプルな味が一番。」と言った。
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旅行から帰ってきてからも、ずっとお腹がゴロゴロいって体調の優れな日々が続いた。でも、食欲はいつもどおりなので、普通に食べるのだが、食物が胃に届いた途端に腸がうねりだす。そんな具合なので、えらく疲れを感じる。仕方ないので、珍しく医者に行くことにした。旅行中からすでに10日ほど経っているのに、お腹の調子が悪いことを話すと、女医は「私もそういうことあった。でも、2週間もすれば元通りになるわ。とにかく、パンとかパスタとかシンプルなものを食べてお腹を刺激しないこと。」と言った。1時間半も待った後たったの2分で診察が終わり、薬ももらわず家に帰り、昼食に納豆とご飯を食べた。

しかし、ラザニアとは、パスタとは、お腹の具合の悪いときや疲れたときに食べたい「シンプル」な食べ物だろうか。以前日本出張に行った社長が、「シンプルなものを食べたい」とマクドナルドに1週間で3回も足を運んだことがあった。私にとって、シンプルな食べ物は、ご飯に味噌汁につきるのだが・・・。シンプルと感じる味も、育った環境や国によって違うのは当然と言えば当然だが、改めて考えると面白い。疲れたときに好む食べ物の違いは、もしかしたら西欧人と日本人の体力差の要因でもような気もする。
by ldnshigoto | 2009-07-14 05:27 | 生活と習慣